恋愛関係や夫婦関係において、お互いの感情や行動が予測可能な「パターン」に陥ることは珍しくありません。
多くのカップルは、対立が生じたときに特定のやり取りを繰り返す傾向があります。それは時に有害で、関係をさらに悪化させてしまうこともあります。
スー・ジョンソン博士は、カップルのセラピーにおいて「ネガティブサイクル」という概念を提唱しています。
これは、カップルが陥る否定的なやり取りのパターンのことを指します。このサイクルが続くと、お互いの理解が深まらず、感情的な距離が生まれてしまいます。
今回は、ジョンソン博士の提唱する3つの代表的なネガティブサイクル、
「相手を悪者にする パターン」
「ポルカダンス パターン」
「凍りついて逃げる パターン」
について紹介し、それぞれの特徴や影響、解決のためのアプローチを見ていきます。
1. 相手を悪者にする
「相手を悪者にする」パターンでは、カップルがお互いを批判し、相手に非があると責め立てるやり取りが続きます。
自分の行動や言葉を正当化しながら、相手を「悪者」と見なすことで、自分を守ろうとする心理が働きます。
これにより、感情的な攻撃や防御がエスカレートし、相手の言動に対してさらなる不満が生まれます。
このパターンでは、問題を解決しようとするどころか、対立が深まり、相手を非難し続けることで関係は悪化します。
たとえば、一方が「あなたはいつも自分勝手だ」と非難し、もう一方が「それはそっちが冷たいからだ」と返すといったやり取りが続くと、どちらも自分の正当性を主張するばかりで、相手に対する共感が失われていきます。
解決のポイント👉
このサイクルを断ち切るためには、まず自分自身が相手を非難し続けていることを自覚し、責任を押し付け合うのではなく、お互いの立場を理解しようとする姿勢が必要です。感情的なやり取りの代わりに、「私はこう感じた」という自分の感情を伝える方法が有効です。
2. ポルカダンス
「ポルカダンス」という表現は、カップルの一方が問題を解決しようと追いかけ、もう一方がその対話を避けて逃げるというダイナミックなやり取りを指します。
追いかける側は、問題をなんとか解決しようと必死に話し合いを求めますが、逃げる側はその圧力を感じ、対話を避けようとします。
この逃避行動が繰り返されることで、追いかける側はますます焦りや不安を募らせ、さらに対話を迫ることになります。その結果、両者の感情的な距離は広がり続けます。
このパターンが続くと、追いかける側は孤独感や無力感を感じる一方で、逃げる側は自分が圧迫されていると感じ、より一層距離を取ろうとします。
この悪循環に陥ることで、カップルはお互いのニーズや感情を理解する機会を失い、関係が冷え込んでしまいます。
解決のポイント👉
このサイクルを改善するためには、追いかける側は自分の焦りを認識し、相手に時間や空間を与える余裕を持つことが重要です。
一方、逃げる側も、問題から逃げるのではなく、適切なタイミングで対話に向き合う勇気を持つ必要があります。お互いのペースを尊重しながら、コミュニケーションを取るための方法を探ることが大切です。
3. 凍りついて逃げる
「凍りついて逃げる」パターンは、カップルのどちらも感情的に閉ざされ、沈黙が続く状況を指します。
お互いが感情を表現することを避け、対話や関わりを拒否することで、関係が冷え込みます。この状態が続くと、カップル間に感情的な距離が生まれ、孤立感や無力感が深まっていきます。
このパターンの問題は、感情の交流が完全に止まることです。
言い争いや非難の応酬がなくても、感情的な断絶はカップルにとって大きなダメージを与えます。
互いに避け合うことが日常化すると、関係を修復する機会を失い、最終的には破綻に至ることもあります。
解決のポイント👉
このサイクルを乗り越えるには、感情を押し殺さずに、少しずつでもお互いの気持ちを共有することが大切です。
沈黙を破る勇気を持ち、相手に対して心を開く姿勢が必要です。無理に感情を押し出すのではなく、小さな対話から始めて、徐々に感情的な絆を回復させることが効果的です。
まとめ
これらの3つのネガティブサイクル、「相手を悪者にする」「ポルカダンス」「凍りついて逃げる」は、多くのカップルが知らず知らずのうちに陥ってしまうパターンです。それぞれが互いの感情や行動に対して反応することが原因で、関係が悪化していくのです。このようなパターンに気づき、どうやって断ち切るかを考えることは、健全な関係を築くための第一歩となります。
カップルセラピーでは、これらのサイクルを解消し、カップルがより良い感情的な繋がりを持てるようサポートします。カップルが互いの感情に共感し、理解し合えるようになると、自然と信頼が回復し、強い絆を築くことができます。
あなたの関係にも、こうしたネガティブなパターンがあるかもしれません。それに気づき、少しずつ改善していくことで、より健康的で満たされたパートナーシップを築くことができるでしょう。
カップルセラピスト 相賀(あいが)ゆか
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